[レポート]セブン&アイ・ネットメディア福永和樹氏による『CCoE立上げの軌跡と拡散戦略』#cm_odyssey

[レポート]セブン&アイ・ネットメディア福永和樹氏による『CCoE立上げの軌跡と拡散戦略』#cm_odyssey

Clock Icon2024.09.10

こんにちは。たかやまです。

2024年 7 月 16 日にオンラインで開催された「7/16(火) Classmethod Odyssey ONLINE ユースケース編」 での「CCoE立上げの軌跡と拡散戦略」についてのレポートになります。

https://classmethod.connpass.com/event/322688/

セッション概要

タイトル : CCoE立上げの軌跡と拡散戦略

弊社におけるCCoE組織立上げから現在までの活動内容とその経験で得た学びを提供します。弊社は23年度からCCoE組織を組成し活動を実施しており、新しい組織を動かす苦労がありました。 講演の中では、どのような問題があったか、それに対しどう対応したか。泥臭いところも含め共有させて頂きます。

スピーカー : 福永 和樹 氏 (株式会社セブン&アイ・ネットメディア クラウド・ソリューション部)

レポート内容

セブン&アイ・ネットメディア様(以降、敬称略)には、CCoEの立ち上げとその拡散戦略についての体験を共有していただきました。本記事では、セブン&アイ・ネットメディアがCCoEを立ち上げ、どのような戦略を展開してきたのか、その詳細を紹介します。

アジェンダ

  1. イントロダクション
  2. 立ち上げの経緯
  3. 立ち上げ活動の紹介
  4. CCoE活動内容と活動しての気付き
  5. 今後の活動

イントロダクション

セブン&アイ・ネットメディアは、2008年7月11日に設立されました。グループ唯一のシステム会社として、グループサービスを提供しています。

クラウド・ソリューション部は、各システムのインフラの構成検討から運用保守まで全てを担当する部署です。セブン-イレブンアプリやグループ各社のECサイトを取り扱い、グループのIT基盤を支えています。

立ち上げの経緯

CCoEの定義は「クラウドセンターオブエクセレンス」、つまりクラウド戦略を推進するために必要な人材や知見、リソースを集約した全社横断型のクラウド活用推進組織です。

セブン&アイ・ネットメディアがCCoEを立ち上げた背景には、経営基盤の強化という課題がありました。内製による技術力でグループビジネスに貢献し、変化に対応するための組織機能を確立することが求められていました。この2つのビジョンから、CCoEの立ち上げに向けて動き出しました。

立ち上げ活動の紹介

立ち上げは次の4つのステップで進められました。

  1. 情報整理と現状把握
    • クラウド活用方針の策定と、障害や課題の認識
  2. ゴールの設定
    • CCoEとしてのミッションを検討し、各機能ごとのミッションを振り分け
  3. To Be像の策定
    • CCoEをどのように拡大していくか、立ち上げ時の状態をどうすればいいかの検討
  4. 実行推進計画
    • ロードマップと体制の検討、各機能ごとのKPIを策定し、経営層承認とCCoEの立ち上げ

この中で特に 経営承認をしっかり得ることが重要 と強調しています。

CCoEはガバナンスを効かせる観点からも組織として動く必要がありますが、ガバナンス対応はシステム担当者からは嫌われがちです。そこを、経営層と一丸となることで各所との調整がスムーズに行えます。

CCoEの立ち位置

セブン&アイ・ネットメディアのCCoEは、グループ内のインフラ組織の一部として機能しています。上位層には既にガバナンスを敷く組織が存在しており、CCoEはその実働部隊としての役割を果たしています。

CCoEの位置づけとしては、上位組織のガバナンスを各所に波及させるための実働であり、物理的・精神的な距離を埋める役割を持っています。これにより、ガバナンスの効果を迅速に反映させることが可能となっています。

CCoEの目標

セブン&アイ・ネットメディアのCCoEは、2030年に向けた長期的なビジョンを持ち、年度ごとに具体的な目標を設定して活動を進めています。以下にCCoEの主な目標を示します。

  1. 2023年度 自社

    • 2023年までにグループ内外におけるクラウド推進のプレゼンスを確立することを目指し、2023年には自社向けの種まきを行い、CCoE実現のための必要項目の検討や取り組みの実施
  2. 2024〜2026年度(3か年目標) グループ内事業会社

    • 2024年から2026年の3年間で、クラウドベストプラクティスの確立、人材育成、成長、コミュニティ形成を主軸に活動
  3. 2027〜2030年度 グループ外

    • 2027年以降はグループ外におけるプレゼンスの確立

CCoEの役割と検討

CCoEは、クラウド活用を推進するために次の7つの機能を持つチームに分かれています。

  1. クラウド活用戦略/方針策定

    • 経営層やステークホルダーと連携してクラウドを活用したビジネス拡大の戦略を立案します。
  2. プラットフォーム

    • 共通機能やリファレンスアーキテクチャの検討を行います。
  3. セキュリティ

    • セキュリティガバナンスの提供を行います。
  4. 運用

    • 運用効率化を目標に、安心して利用できる仕組みを提供します。
  5. クラウド利用標準化

    • クラウド利用におけるガバナンスの標準化、効率化、品質の均質化を目指します。
  6. 研究開発/技術支援

    • 新技術を模索し、サポートするチームです。
  7. カルチャー醸成/スキル強化

    • 人材育成やナレッジの蓄積など、持続的なカルチャーを育むための検討を行います。

CCoE各チームの関係

CCoEの各チームは、次のように連携して活動しています。

  • クラウド活用戦略チームは、経営層やステークホルダーと連携し、クラウドを活用したビジネス拡大の戦略を立案します。この戦略は、他のチームに対して方向性を示す重要な役割を果たします。

  • カルチャー醸成チームは、クラウド活用戦略チームからの方針を受けて、人材育成やナレッジの蓄積を進め、実働チームに連携します。

  • プラットフォームチーム運用チームセキュリティチームは、それぞれの専門分野で活動しつつ共通機能の検討、ナレッジの最新化を行いクラウド利用標準化チームと連携して標準化・効率化を進めます。

  • クラウド利用標準化チームは、各チームと連携し、クラウド利用におけるガバナンスの標準化・効率化を目指します。

  • 研究開発チームは、新技術のPoCを実施し、各チームに反映していくことを目指します。

CCoEの活動内容と気づき

活動内容

  1. AWS認定アドバンストティアの取得

    • セブン&アイ・ネットメディアの技術力がAWS認定につながり、社内外からの反響を得た
    • ホームページの更新や事例の検討など、インフラ部門の社員には関係ないと思われていた活動が、実際に実施すると各所からの反響を得ることができた
  2. アカウントの統制とセキュリティ検知の整備

    • AWSのサービスを使用し、予防的統制や発見的統制を実装
    • CCoEの管理層とプロダクト層に分けて管理を行い、SCPによるリージョン制限やConfigルールを用いた統制を実装
    • Security Hubで管理し、問題が発生した場合には管理層のSecurity Hubへ情報を集約し検知
    • ログを別のアカウントで管理し、管理層のログ集約アカウントへ集約
  3. クラウド利用ガイドラインの整備

    • 上位文書を管理する組織と連携し、要件定義やレビューにかかる工数を削減
    • 元々存在していた安全構築知見における上位文書が幅広い内容であったため、クラウドベースでの判断に迷うことがあったが、ガイドライン作成を進めることで効率化が図れた

CCoE組織を運営して気付いた問題点

  • 工数確保の難しさ

    • 案件とCCoE掛け持ちによるスケジュール遅延や工数の確保が課題
    • CCoEの各チームは専属ではなく、案件の合間にCCoEを進めていたため、スケジュールがうまく噛み合わず遅延が発生
  • 目指す姿の明確化

    • 2030年の目標は決まっていましたが、実際の活動においてチームとしての目標や判断基準が明確でなかった
  • 夢を詰め込みすぎたタスク

    • CCoE立ち上げ段階では、やりたいことや必要なことを全てタスク化
    • 結果、現実との乖離が生じ、進捗会議でのモチベーション低下につながってしまった

CCoE組織の立て直し

CCoE組織を運営する中で、セブン&アイ・ネットメディアでは上記の問題点が明らかになり、半年たった時点で立て直しを判断したとのことです。
これらの課題に対処するため、以下の組織の立て直しが行われました。

  1. 工数確保の徹底

    • 案件とCCoEの掛け持ちによるスケジュール遅延や工数の不足が課題
    • 各部門の上長との相談のうえ各メンバーの工数を2割CCoEに割り当てることを決定し工数確保を徹底した
  2. チームミッションの明確化

    • チームとしての目標や判断基準があやふやだった
    • 各チームのミッションを明確化し、活動の方向性をあらためて統一
      • この段階での成果物が「CCoEの役割と検討」の章で紹介した各チームの機能
  3. タスクの再検討

    • 立ち上げ時に夢を詰め込みすぎたタスクが多かったため、進捗会ではお通夜状態に...
    • タスクを本当に必要な現実的なタスクに絞り込み、進捗会議でのモチベーション低下を防ぎ、効率的なタスク進行を実現した

今後の活動予定

  1. 社内外でのコミュニティ活動の活発化

    • 技術交流会を開催し、内部だけでなくグループ会社/外部の方とも交流を深め、技術的な知見を共有する
  2. 他パブリッククラウドに対応可能な内製力の向上と標準化の準備

    • Google CloudやAzureなど、他のパブリッククラウドについても検討し、グループ各社からの要望に応じて、AWS以外のクラウドサービスも活用できるように準備を進める
  3. 会社内の統制と上位組織との関係強化

    • 上位組織との関係を強化し、CCoEを円滑に運営するための体制強化
  4. グループへのナレッジ共有

    • 社内のポータルや外部ブログで技術的な発信の実施
  5. 他社CCoE組織との交流

    • 他社との情報交換会を通じて、他社CCoE組織と交流を深めていく

所感

CCoEの立ち上げから組織に展開していくための拡散戦略、そしてその裏で起こった苦労話について、セブン&アイ・ネットメディア様の体験談を伺うことができました。

ネット上でCCoEについて調べると、素晴らしい成果を出している企業の情報ばかりが目に入りますが、実際には立ち上げから運営に至るまで、様々な問題に直面することがわかります。

今回のセブン&アイ・ネットメディア様のセッションでは、そういったCCoEにおける成功体験だけでなく、直面した課題やその解決策についても詳細に共有していただきました。特に、工数確保の難しさやチームミッションの明確化、夢を詰め込みすぎたタスクの再検討といった具体的な問題点とその対処法は、非常に参考になる内容でした。

特に、CCoEの立ち上げにおいては、経営層の協力を得ることを強調されていたのが印象的でした。

セブン&アイ・ネットメディア様のCCoE立ち上げの体験談は、これからCCoEを立ち上げる企業や、既にCCoEを運営している企業にとっても役立つ内容ですので、ぜひ参考にしていただければと思います。

以上、たかやま(@nyan_kotaroo)でした。

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